孤独だからこそ
SF作家シオドア・スタージョンの短編集「一角獣・多角獣」読了。
・ビアンカの手 ・孤独の円盤
・めぐりあい ・監房ともだち
が特に好き。
孤独の円盤の序盤の海についての文章、
「さまざまなものがもつれあった飛沫。色彩に重なる色彩。単なる色彩ではなくて、白と銀色の入りみだれ。
もしもこの光が音だったら、それは砂浜に寄せる波のような音であるにちがいない。
もしもわたしの耳が目だったら、その目はそんな光を見るにちがいない。」
この文章にうっとり。こんな感性を持つなんて、と思っていると、それが作者が持つものだけではないというのが話を読み進めると分かり切ない。どの話においても、序盤から想像できない結末を迎えるのが彼の特徴みたい。
悲しみを、孤独という孤独を底まで知っているからこんな文章が書けるんだなと思う。
孤独の円盤はロマンチック寄りだけど、他は基本的に救いがなく一話一話の印象が強烈。個人的にテーマは美と破滅だと思っている。
安部公房やコルタサルみたいな幻想文学が好きな人は、好きだと思います。おすすめ。
洗濯物の夢
洗濯をする夢を見た。
私は怯えつつ好奇心でドキドキしながらレースのついた繊細な下着だけ入れる。なぜなら洗濯機にはライオンみたいな凶暴な犬がいて、その犬がいる日には下着をぐちゃぐちゃにされてしまうかもしれないから。
なぜか周りに人だかりが出来ていて、ああ、あんな下着を…と言われていた。今思うとかなりカオス。
バナナブレッドのプディング
大学生だった私が川上未映子の「すべて真夜中の恋人たち」を読んだ時、私は彼女の文章が苦手だと思った。遠回りに遠回りを重ねて、ふわふわしていて、本当に言いたいことがよく分からないと思ったから。それからSNSで何度も彼女の記事を目にしたけど、あの時の苦虫を噛み潰したような気持ちを思い出して、なんとなくその先を読む気になれなかった。
けど、つい最近ツイッターのタイムラインに川上未映子のブログがただ貼ってあって、夜だったからか、何も考えずに押した。そしたら、大学生の時とは打って変わって、私は彼女の虜になってしまった。
「バナナブレッドのプディング」を通して伝わる、作家が持つ普遍的な悩み。私はこの作品をまだ全身で体感出来ていないから言葉の深意まで共感は出来なかったけれど、彼女がやっと手にしてこの作品の言葉に触れた時の表現が自分の心臓に染み渡るくらいどきどきして、彼女の気持ちを体験したような気になって、一緒に泣きたくなってしまった。
そのあとフォロワーさんが教えてくれた、藤田貴大×川上未映子のインタビューを読んだ。メインは共作舞台「まえのひ」についての話だけど、バナナブレッドのプディングに少し触れているということで。
結局、私は顔に熱がこもるくらい見入ってインタビューを読んだ。一字一句見逃したくない。個の強い二人が相互理解し合った上で共作したものがこんなに逞しいものだなんて、すごい。一人でも強くて、二人でももっと強い。お互いが違う目線だったとしても、根本が同じ価値観で作り上げていくことで個々が自然にしなやかに交わって、変わっていく。そしてそれは新しい方法で人の心を揺さぶる。この舞台を観ていないのに、そのエネルギーが伝わる。
機会があれば今年中にでも、舞台を観たいと思った。後回ししちゃいけない、だって「まえのひ」だから。今日は明日の前日だから。そう思った。
私が昔抱えていたもやもやはどこに行ったのだろう、でもあの時は分からなかったんだろう。遠回りに遠回りと感じていたあの表現が、物事の熱意を伝えるための豊かで繊細な表現だったことが。
そうやって昔の自分の価値観が翻る瞬間も体験して、都合の良い話だけど、彼女の紡ぐ言葉がとても好きになった。
雨
雨が降り始めた。二階の部屋から窓を開ける。唐突に降ってきた雨に対して、好きだと思った。去年は梅雨の時期がとても短かったから、今年は長いと良い。雨がいつも好きな訳じゃないけど、特に部屋から見る雨が、雨音が好きなんだと思う。
日記を始めてみようと思います。今は時間があるので、日々思うことや趣味の話などさまざまを、思いついた時に、気軽に。